ガス自由化とは?~2017年4月スタート~

2016年5月10日

簡単に言うと…

  • 2016年4月の電力小売自由化に続き、2017年4月から都市ガスの小売自由化がスタートします。
  • 都市ガス自由化の目的は、主に内外の価格差是正と都市ガスサービスの向上です。
  • 都市ガス自由化による競争を通じて、私たち一般家庭により快適でお得なサービスが拡大することが期待されています。

ガス自由化とは?~2017年4月スタート~

メディアは、電力自由化については頻繁に取り上げていますが、都市ガス自由化についてはそれほど熱くは取り上げていません。そもそも都市ガス自由化という言葉自体、聞いたことがないという方も少なくないようです。

2017年4月から、都市ガスの小売自由化がスタートします。ここでは、都市ガス自由化の基本的な情報を網羅的に解説しています。

都市ガス自由化とは

都市ガス自由化とは都市ガス自由化とは、一般事業者でも都市ガスの小売に参入できる制度です。2017年4月に全面自由化する予定で、以後はどんな事業者でも、一般家庭を含めた全ての需要家に対して都市ガスを小売できるようになります。

都市ガスに対し、LPガス(プロパンガス)はすでに市場が自由化されており、2013年3月現在、全国にあるLPガス事業者の数は21,052社にものぼります。

一方で、都市ガス市場は部分的にしか自由化が進んでおらず、同じく2013年3月現在では全国に209の事業者しかありません。しかも、この209の事業者のうち、東証1部に上場する東京ガス大阪ガス東邦ガスの大手3社だけで全国の都市ガス需要の7割を超える寡占状態となっています。

都市ガス自由化とは、実質的には、この大手3社の寡占市場に競争原理を導入する新制度と言えるでしょう。都市ガス市場も部分的には自由化されているとは言え、現状、まだ工場などの大規模な需要家への小売だけが対象となっているにすぎません。商店や一般家庭など小さな需要家は、地域によっては大手都市ガス会社との契約が不可欠な状態となっています。都市ガスの全面自由化が始まれば、私たちは私たちの判断でガス供給会社を選ぶことができるようになるのです。

都市ガス自由化の背景と目的

都市ガス自由化の背景と目的1995年、小売対象を限定する形で都市ガスの自由化がスタートしました。以後、段階的に小売対象の範囲が拡大しましたが、その範囲は工場や法人などの大規模な需要家までにとどまりました。

小規模な商店や一般家庭向けの小売は依然として都市ガス業界の独占状態のままで、他の一般事業者は参入できない状況だったのです。

経済産業者はこうした都市ガス市場の状況を問題視し、2013年より総合資源エネルギー調査会において「都市ガス自由化」の議論をスタートさせました。議論を通じて決定した政策の大きな柱が、2017年4月からの都市ガス自由化です。

都市ガス自由化の目的は、主に内外の価格差是正都市ガスサービスの向上です。日本の都市ガスは、米国やEUなど都市ガス先進国に比べて価格が高いことで知られます。米国は日本の半分程度の価格で、EU各国も日本より遥かに安い価格です。こうした世界のスタンダードとの価格差を少しでも是正することが、ガス自由化の第一の目的です。

また、第二の目的は、自由化の競争から生まれる多様なサービスの創出です。日本はガスの原料のほとんどを輸入に頼らざるを得ない状況なので、競争原理による価格の引き下げには限界があります。

そのため、競争原理のベクトルは、ゆくゆくは料金よりもサービスの多様化につながると考えられています。現に大阪ガスでは、2017年4月の都市ガス自由化を見越して、2016年4月よりエネファーム(※)から生まれた余剰電力を買い取る新サービスを開始しています。

※エネファーム:都市ガスによって電気とお湯を作り出す自家システム

電力自由化や海外でのガス自由化について

電力自由化や海外でのガス自由化について2013年11月13日に電気事業法が改正され、将来的な電力の小売完全自由化が決まりました。その前日の11月12日には、経済産業省内の総合資源エネルギー審議会において、都市ガスの小売自由化に向けた議論がスタートしました。

政府は急ピッチでエネルギーの小売自由化の議論を尽くし、その結果、2016年4月からは電力自由化が実際にスタートし、2017年4月からは都市ガス自由化が実施されることが決まりました。

都市ガス自由化が決まった背景には海外における多くの成功事例があったと言われます。具体的には早くから都市ガス自由化を実施してきた米国やEU諸国の成功事例です。

◆都市ガス全面自由化がスタートした年
・カリフォルニア州…1995年
・ニューヨーク州…2004年
・イギリス…1998年
・イタリア…2003年
・スペイン…2003年
・ドイツ…1998年

これらの国々・地域では、都市ガス自由化による明らかな市場変化が見られます。特に顕著な変化はサービスの多様化です。

アメリカでは、在宅介護の利用者向け、集合住宅居住者の利用者向けなどのように、利用者の形態に応じたガス小売サービスが誕生しました。イギリスでは、通信会社のTelecom Plus社が電気・ガス・通信をセットにしたサービスを提供しています。スペインでは、法律相談や鍵のトラブルなど、ガスとは関係のない事業と絡めたガス小売サービスなども見られます。

サービスの多様化は各事業者間に競争を促します。都市ガス自由化による競争を通じ、私たち一般家庭により快適でお得なサービスが拡大することが期待されています。

都市ガス自由化のスケジュール

過去の部分的な自由化から将来の全面自由化までの流れを、時系列でまとめました。

1995年…都市ガス自由化スタート

巨大工場などを対象に、都市ガスの小売自由化がスタートしました。
この時点で、都市ガス需要全体の約47%が自由化の範囲に含まれました。

1999年…自由化の範囲が拡大

大規模工場や商業施設なども自由化の対象となりました。
この時点で、都市ガス需要の約52%が自由化の範囲に含まれました。

2004年…自由化の範囲が拡大

中規模工場やホテルといった規模の施設までが自由化の対象となりました。
この時点で、都市ガス需要の約56%が自由化の範囲に含まれました。

2007年…自由化の範囲を拡大

小規模工場やビジネスホテルなど、より私たちの身近な施設も自由化の対象となりました。この時点で、都市ガス需要の約63%が自由化の対象に含まれました。

2017年…全面自由化

小規模な商店や一般家庭も含め、全ての需要家が自由化の対象となります。

2022年…導管分離

大都市ガス会社の導管部門が分離されて独立企業となります。

2022年の導管分離にも注目

2022年の導管分離にも注目上で都市ガス自由化に関連する流れを確認しましたが、これらの中で特に注目すべきは、2022年の導管分離です。導管とは、いわゆるガス管のことです。

運搬船などで運ばれた都市ガスの原料(主に液化天然ガス)は、一旦、巨大なタンクに保管されます。このタンクから変圧器やガスホルダーなどを経由し各家庭へと供給されています。タンクから各家庭へと至るプロセスでは、一貫して地下の導管が使用されています。導管は、いわば都市ガス事業における幹線道路であり、要の事業部門の一つとも言えます。この事業部門が2022年、独立分離することになったのです。

具体的には、都市ガスの総需要の7割以上を占める東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの導管部門が独立分離すると見られています。なお、この導管の利用権にからむ種々の問題は、都市ガスの完全自由化を目指すうえでの大きな障壁の一つでもありました。

導管部門の独立運営が決まり、一部の大手都市ガス会社における導管の実質的な寡占状態が緩和される可能性が出てきました。ガス料金の引き下げを含め、私たち一般需要家にも様々な恩恵をもたらしてくれることが期待されています。

都市ガス自由化によって私たち一般市民が得られる最大のメリットは、サービスの多様化です。各家庭のニーズに合った都市ガスサービスを選ぶことによって、実質的な家計負担を減らすことができるかも知れません。

2017年4月の小売自由化、そして2022年の導管分離以後の動きに注目しましょう。